女性の電気工事士の需要が高まっている理由

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電気工事士は「男性の仕事」というイメージがあるかもしれませんが、近年では女性の電気工事士の需要が高まっています。

なぜ最近になって女性電気工事士の需要が高まっているのでしょうか。

この記事では、需要の高まりの背景を解説するとともに、女性が電気工事士として活躍するために必要な知識と対策を解説します。電気工事士としてのキャリアを考えている方は参考にしてください。

女性の電気工事士の需要について

女性の電気工事士の需要が高まっている理由として、次の3つが考えられます。

  • 単身女性世帯の増加
  • 顧客の信頼感
  • 人手不足

ひとつずつ見ていきましょう。

単身女性世帯の増加

エアコンの取り付けや家電の修理などは、個人宅を訪問し一定時間滞在するケースがほとんどです。

単身女性の場合、自室に見ず知らずの男性を入れることに対して恐怖感を感じる方も少なくありません。

一人暮らしの女性でも安心してサービスを受けてもらうために、女性の電気工事士が求められるケースが増えています。

また産婦人科や女子寮のような女性ばかりの施設でのメンテナンス業務なども、女性の方が安心感できると言われているのです。

女性電気工事士を採用していることで、顧客だけではなく企業への信頼にもつながるため、企業側にもメリットがあるといえます。

顧客の信頼感

男女雇用機会均等法により、性別を理由とした差別は禁止されています。

1985年に施行されて35年以上が経過しますが、実際は女性だからという理由で採用を見合わせるケースがなかったわけではありません。

電気工事士も長いあいだ男性の仕事とされてきましたが、先述の需要の拡大から近年は女性を積極的に採用する企業が増えています。

女性を積極的に登用すれば企業イメージも上がり、もし「女性の作業員に来てほしい」という顧客のニーズがあっても応えられます。

女性雇用を積極的に行っている企業だとイメージアップにもなり、顧客の信頼感を獲得するのに一役買っているのです。

人手不足

建設業界では人手不足が深刻です。

国土交通省の資料によれば、平成9年をピークに建設業の就業者人数は右肩下がりであることが示唆されています。特に技能者の減少が大きく影響しており、人手不足が深刻です。

平成9年平成22年令和3年
建設業就業者685万人498万人482万人
技術者41万人31万人35万人
技能者455万人331万人309万人

引用:国土交通省|最近の建設業を巡る状況について

また建設業従事者の35%以上が55歳以上で、今後進行する高齢化および大量退職による人手不足がさらに深刻化することが懸念されています。

そのような状況の中、女性の労働力が期待されています。男性だけの仕事とは言っていられない事情が、電気工事士業界にはあるのです。

女性が電気工事士になるための注意点

女性の電気工事士への期待が高まっている状況ですが、いくつかの注意点があります。それが次の3つです。

  • 職場に女性が少ない
  • 体力は必要
  • 資格取得

どのような注意が必要なのか、詳しく見てみましょう。

職場に女性が少ない

もともと建設業界は、男性中心の職場でした。関連する業界である電気工事士の現場も、この傾向は例外ではありません。

画像引用:WAT REPORT|建設業における女性就業者の比率と職種、地位について

厚生労働省による労働力調査をもとにしたグラフを見てみると、建設業における女性就業者の割合はわずか2.3%です。

これは建設業界で働く100人のうち、女性は2名しかしないことをあらわしています。

近年女性の割合が徐々に増えてきているものの、まだまだ圧倒的に少数派であるのは間違いありません。

体力は必要

力がなくても作業ができる電動工具のような便利な道具が増え、昔と比較すると女性でも作業しやすくなりました。

しかし資材を運ぶ、重い機器を持ち上げるなど、どうしても腕力や体力が必要な場面はあります。

ひとりで作業する場面も当然あることから、ある程度の体力と筋力が必要です。

また体調不良で工事スケジュールに穴を開けないよう、体調管理や健康の維持など自己努力も必要です。

資格取得

電気工事士の求人を見ると「未経験者や初心者歓迎」の謳い文句も多いようですが、やはり資格は重要です。

資格があれば頭脳系の仕事や管理・監督業にシフトでき、報酬も高くなります。

特に電気工事士のような国家資格は、資格者でないと対応できない作業もあるため現場で重宝されるでしょう。

電気工事士の資格について

国家資格である電気工事士は、電気工事に関係するあらゆることに対応できる独占資格です。

将来的には独立開業も可能で、工夫次第で高収入も見込めます。

ここでは、電気工事士の資格について詳しく解説します。

第二種又は第一種電気工事士

電気工事士には第一種と第二種があります。

それぞれの違いは対応できる業務範囲や免状申請に必要な実務経験です。

第一種電気工事士第二種電気工事士
対応できる業務第二種の範囲に加えて、最大電力500キロワット未満のビルや工場、大規模な店舗の工事一般住宅や小規模な店舗など600ボルト以下で受電する設備の工事
受験資格特になし免状申請のために3年以上の実務経験が必要特になし
試験内容筆記・技能筆記・技能
更新のため5年に1回定期講習受講の義務特になし

第二種・第一種ともに、受験に必要な資格や学歴はありません。

第二種は試験合格後に都道府県知事に申請すれば免状を取得可能で、すぐに実務に入れます。

一方の第一種は、免状申請に3年以上の実務経験が必要です。

合格証には有効期限がないため、先に試験に合格したのち実務経験を積むのもひとつの手です。

第二種は一度合格すれば更新の必要がありませんが、第一種は5年に1度の定期講習受講が義務付けられています。

これを怠ると免状を返納しなければならないため注意が必要です。

また、電気工事士が電気工事士法又は電気用品安全法に違反したときは、第一種でも二種でも電気工事士免状の返納を命じられることがあります。

法律を遵守するよう努めましょう。

資格の合格率

資格の合格率は、試験を主催している電気技術者試験センターが公開しています。令和4年度の合格率は次のとおりです。

筆記合格率実技合格率
第一種58%62%
第二種56%72%

第二種の筆記試験は四択50問のマークシート方式で、試験時間は120分です。

内容は電気に関する基礎理論や配線設計、電気工作物の保安に関する法令などの知識が問われるものです。

第一種も同じく四択50問のマークシートで、第二種よりもやや長い140分となっています。

電気に関する基礎理論や配線に関する知識に加え、発電・変電施設や電気工事の施工方法などについて問われます。

技能試験は、第一種が最大電力500kW未満の自家用電気工作物作業など、第二種が一般的な電気工事に係る基本的な作業が出題範囲です。

どちらも難易度は高くないといわれていますが、合格率は60%前後です。

普通に勉強しただけでは、全体の4割が不合格になるため、試験の経験者にコツを聞いたり、過去問を何度もこなしたりなど対策が必要でしょう。

3年以上の実務経験で独立可能

第二種は合格後に都道府県に申請することで免状を取得できますが、第一種免状の取得には3年以上の実務経験が必要です。

試験合格前からの実務経験も含めることが可能なため、すでに3年の実務経験がある人は、合格通知が到着後にすぐ免状を申請できます。

独立する場合は、活動予定の都道府県で電気工事業者の登録をします。

合格証明とともに実務経験証明書を提出し、登録料を支払い申請しなければなりません。

実務経験証明書は、申請先の都道府県のホームページよりダウンロードし、実務経験を積んだ会社に実務経験の詳細と証明の印(会社の代表者印)をもらい提出します。

電気工事士の仕事内容

電気工事士の主な仕事内容は、電気に関する設置やメンテナンスです。

細かな職務内容は多岐にわたりますが、代表的な仕事は次の3つです。

  • 一般家庭の家電取り付け作業
  • ビルメンテナンス
  • 施設管理

この3つは女性も活躍できるメジャーな仕事です。

それぞれ詳しく解説します。

一般家庭の家電取り付け作業

電気工事士は、電気を使用する家電の取り付け作業を請け負います。

エアコンの設置工事などが代表的な仕事ですが、他にも次のような作業があります。

  • 屋内の配線工事
  • 照明の設置
  • コンセントの設置や交換
  • 警報器やインターホンの取り付け
  • 太陽光発電装置据付作業

一般家庭以外にも店舗など600V以下で受電する小規模施設の電気工事であれば、第二種電気工事士の資格で対応できます。

600V以上になると、第一種電気工事士の資格が必要です。

ビルメンテナンス

ビルメンテナンスは、電気設備の保守を中心に点検・修理を請け負う仕事です。

コンセントやブレーカー・照明器具の交換など、比較的簡単な電気工事に対応します。

ほかにも自動ドアやエレベーターに関する作業や、水道・ボイラーなどのトラブルへの対応を期待されることがあります。

ビルメンテナンスに関係する資格はいくつかありますが、その中でも「ビルメン4点セット」といわれる資格を取得しておくと良いといわれています。それが次の4つです。

  • 第二種電気工事士 (電工2種)
  • 二級ボイラー技士 (2級ボイラー)
  • 危険物取扱者 乙種4類 (危険物 乙4)
  • 第三種冷凍機械責任者 (冷凍3種、3冷)

電気工事士の資格は第二種で十分ですが、合わせて上記の資格を取っておくと安心です。

施設管理

建物の施設管理の仕事には、給排水設備や空調設備管理などさまざまな種類がありますが、電気工事における施設管理は施設内の電気設備の点検・保安業務を指します。

定期的な月次点検や年次点検を行い、電気設備の状態をチェックする一方で、電気関係の事故が発生した場合は緊急対応や修理にあたります。

キャリアアップのために、国家資格である「電気主任技術者」の資格も合わせて取得するといいでしょう。

電気工事士の資格を活かしたおすすめの仕事

最後に電気工事士の資格を活かした女性におすすめの仕事をご紹介します。代表的なものは次の3つです。

  • 電気配線工事
  • エアコン取付
  • サービスエンジニア

どのような仕事内容なのか、それぞれ見てみましょう。

電気配線工事

電気配線工事は、変電所から各家庭までを結ぶ配線から施設・家庭内の電気配線まで、電気配線に関わる工事を請け負う仕事です。

また、電気配線の維持管理や保守・メンテナンスの仕事も含みます。

電力会社の大規模な配線工事からスイッチやコンセントの設置まで、電気配線工事の作業は多岐にわたります。

新築の場合、建物内の電気配線の設計から配電盤などの電気設備の設置などゼロから配線を作り上げることもあるのです。

女性の場合は配電盤内の細かい作業など、手先の器用さを活かした働きを期待される場合が多いようです。

イベントのライトアップなど感性を生かした仕事に取り組むなど、配線工事のスキルを活かして活躍する女性もいます。

エアコン取付

一人暮らしの女性が増え「エアコンの取り付けの作業を女性にお願いしたい」という声も増えているようです。

電気工事を請け負う会社の中には「女性電気工事士が伺います」とアピールしている企業もあり、それだけニーズがあるのがうかがえます。

エアコンの本体を壁に掛ける作業では筋力が必要ですが、ビス止めや配線工事は女性でも体力を気にせずにできる作業です。

また、女性電気工事士はエアコン取付以外にも次のような作業にもニーズがあります。

  • シーリングライトなどの取付
  • 高所の電球交換
  • トイレ換気扇の交換
  • センサーライトの取付・交換
  • 防犯カメラ設置
  • 浴室乾燥機の取付

一人暮らしの女性に限らず、高齢者の場合も女性電気工事士の方が安心して依頼できるとの声もあり、女性採用を積極的に行っている企業も増えています。

サービスエンジニア

サービスエンジニアは、電気にまつわる施設の修理やメンテナンスを行う仕事です。

電気機器の定期的な検査や故障への対応などにあたります。

ひと口にサービスエンジニアといっても、オフィスビルや商業施設の空調設備のメンテナンスや医療機器の点検、携帯基地局の保全や太陽光発電のメンテナンスや顧客対応など様々な業務を行います。

また、個人宅へ家電の修理のために訪問することもある、守備範囲が非常に広い仕事でもあるのです。

なかでも女性の一人暮らし世帯や産婦人科の病院が顧客の場合、女性の電気工事士の方が受けが良い場合もあります。

電気工事士は女性でも働きやすい業種

電気工事士は、建築現場での仕事が多く、ある程度の力仕事は避けられません。

その一方で、知識を活かした工夫や細かい作業への対応も必要です。

特に配電盤へ電線を取り付ける作業は緻密さが求められるため、手指が小さい女性の方が有利な場合もあるでしょう。

また、自分の特性やスキルを活かせる業務を選ぶことで、活躍のチャンスがあるはず。

まだまだ少ない女性電気工事士ですが、求められるシーンも数多く、資格を活かして働きやすい業種といえるでしょう。

まとめ

電気工事士の業界に女性が増えつつあるとはいえ、まだまだ男性中心の仕事である点に変わりはありません。

しかし、昔と事情が大幅に変わってきたことで女性電気工事士の需要が高まっているのも事実です。

体力面や職場環境の関係で女性には不利な面もあるものの、社会の需要として女性が求められている状況は変わりません。

女性だからと断られる理由もないため、興味があれば電気工事士を目指してみるのもいいでしょう。

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