友人や同僚から「エアコン取り付けの副業を始めて儲けている」という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。
「専門資格を持ったプロじゃないとできない」と思っていた人からすれば、副業でできるようなものなのかと疑問に思ってしまうのも無理はないでしょう。
しかし一部のエアコン作業には例外があり、特定の資格を有していなければ取り付け業務はできません。
これからエアコン取り付けを副業で始めようと思っている人からすると、どんな資格がいるのか気になるところです。
この記事では、エアコン取り付け業務に必要な資格とあれば便利な資格の紹介、素人や初心者が陥りがちなミスやリスクについて解説します。
副業で、あるいは独立してエアコン取り付け業務を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
エアコン取り付け業務 資格について
大前提としてエアコン取り付け業務に資格は必要なのでしょうか。
実は一部の例外を除き、基本的にエアコン取り付け業務に資格は必要ありません。
ではなぜそのようになっているのか、詳しく見ていきましょう。
基本的に資格は必要なし
エアコンの脱着作業とそれに関連する一部の作業については、エアコンの取り付けに関係する資格は必要ありません。
取り付けの手順を守り、正しく取り付けができるのであれば、極端な話ですがDIYも可能です。
家電量販店などでエアコンを購入した時に「設置料金」を請求されることもあるため、資格が必要だと思っている人も少なくないでしょう。
全ての業務が無資格で出来るわけではありませんが、脱着であれば誰でも可能です。
しかしエアコンの脱着に関しては難易度が非常に高く、素人では難しいというのが現実です。
エアコン本体に相当の重量があるほか、精密機器であることから取り付けに失敗するとエアコンが故障したり、大きな事故に繋がりかねません。
エアコン取り付け業務を副業で行う際にも資格は必要ないのは事実です。
一方で、常に危険と隣り合わせな業務であるため、完全未経験で独立するにはあまり現実的ではないでしょう。
一部エアコン作業には資格が必要な場合もある
「DIYの範囲でもできる」のは事実ですが、エアコン取り付け業務の中には無資格では行っていけない作業も含まれています。
代表的なものが、コンセントの移設です。
近年は多くのDIY動画がインターネット上にアップロードされており、初心者でもできるようわかりやすく解説が付けられたものも見ることができます。
しかし、一歩間違えれば命の危険に関わる事故につながりかねません。
壁面への脱着だけでも作業難易度が高いことに加え、場合によってはコンセントの移設や内外接続線の固定などの業務が付随することもあります。
エアコンの取り付け業務そのものに資格は必要ありませんが、関連する業務で必要な資格があれば取っておかなければなりません。
エアコン取り付けで資格が必要な業務
具体的にエアコンの取り付けで業務が必要になるシーンは、大きく分けて次の2つです。
- アース線・コンセント配線・電気工事
- 600V以上の業務用エアコンの設置
副業あるいは独立してエアコンの取り付け業をビジネスとするのであれば、上記の2つの作業を避けては通れません。
どのような業務内容でどの資格が必要なのか、詳しく見ていきましょう。
過去に無資格でエアコン取り付けを行った業者が事故を連続して起こしたことがありました。
電気に関わる工事であるため、最悪の場合火事につながる可能性もあります。
副業や独立してエアコン取り付け業務を実施するのであれば、それらの事故を起こさないための資格を持っておく必要があります。
アース線・コンセント配線・電気工事
エアコンを設置するには、各種電気工事に関わる資格を持っておく必要があります。
具体的にはアース線・コンセント配線、それに関係する電気工事です。
アース線は、エアコンから電気が漏れ出す漏電と呼ばれる現象が起きた際に、その電気を逃がすために設置される配線のことです。
エアコンだけではなくほかの家電製品にもついているものですが、漏電した電気を逃がす配線がないと、機器の故障や事故につながります。
アース線を設置するためのアース端子を設けたり、地面などに逃がすような専門的な知識と技術が必要です。
また、コンセント配線も必要になる可能性があります。
エアコンの大きさによって異なりますが、家庭用のエアコンでも大型のものになると、200V対応のコンセントが必要になるケースがあります。
当然、高圧電流を扱うことになるため、電気工事技士の資格は必要不可欠です。
他にも配線に関連する仕事の中には、次のようなものもあります。
- 内外接続線の固定
- 内外接続線への保護装置設置
内外接続線とは、エアコン本体と室外機を結ぶケーブルであり、電気工事の世界では低圧電源に使用されるものです。
しかし、低圧といっても素人が扱うと重大な事故につながりかねない点は変わりありません。
これらの工事を行うためには、後述する電気工事に関する資格を有しておかなければなりません。
資格がないまま電気工事を行うと、作業者本人に対して3ヶ月以下の懲役、または罰金3万円以下が適用される可能性があります。
600V以上の業務用エアコンの設置
家庭用のエアコンよりも大きな出力が求められる業務用エアコンの設置工事に関しても、無資格で取り付け業務を請け負うことができません。
ただしすべての業務用エアコンが対象というわけではなく、600V以上の電源を必要とする業務用エアコンが対象です。
そもそも業務用エアコンは、家庭用エアコンと電源の取り方が異なります。
家庭用で使われる電源は単相と呼ばれるもので、電圧が低く安全なのが特徴です。
一本が電気を受けるための電線、もう一方が電気を送るための電線だと考えればいいでしょう。
一方業務用エアコンなどの電源となっている三相とは、三つの波形で電気が流れている状態で機器に電気を供給する仕組みを採用したものです。
100Vも存在していた単相とは異なり、三相は200V電源のみです。
600V以上の業務用エアコンとなると、取り扱う電圧が高くなるため危険度がさらに増します。
また、工事の際には「絶縁トランス」と呼ばれる専用の機器の設置が必要となるため、工事の危険度は家庭用電源の設置とは比べ物になりません。
こちらも無資格で工事を行うと罰則の対象となります。
自身やお客様の安全を守るという意味でも、無責任に仕事を受けず自分の資格と照らし合わせて受けるようにしましょう。
大きな損害が発生すると、その発生を負担しなければならなくなります。
エアコン取り付け作業にあれば便利な資格
エアコンの取り付け作業を行う際に、あれば便利な資格というものがあります。
絶対必要というわけではありませんが、持っているとすべての作業を自分一人で行うこともできるでしょう。
特に便利といわれる資格は次の3つです。
- 第二種電気工事士
- 電気工事施工管理技士
- 冷媒フロン類取扱技術者
それぞれどのような試験なのか、合格率などと合わせて詳しく解説します。
第二種電気工事士
第二種電気工事士は、電源の配線やアースの施工、コンセントの設置・増設などを行う際に必要となる国家資格です。
エアコンの取付業務を行うにあたって必須と言っても過言ではない資格であり、優先的に取得しておきたい資格でもあります。
一般財団法人 電気技術者試験センターが実施している試験で、学科試験と技能試験の2つに分かれています。
受験にあたって特別な経歴や実務経験は必要ありませんが、筆記試験の合格率が50%前後、実技試験が60%と決して優しいとは言えない試験です。
試験は年2回実施されるため、1回目の試験でダメだったとしても諦めず、次回の試験に向けて座学と実技を身につけましょう。
なお1回目の試験で筆記試験のみ合格している場合、2回目の試験は実技のみです。
電気工事施工管理技士
電気工事施工管理技士は、一般財団法人 建設業振興基金施工管理技術検定が実施している試験です。
電気工事施工管理技士の資格を取得すると、肩書きに監理技術者や主任技術者が使えるようになります。
持っている資格が2級か1級で肩書が変わるため、注意が必要です。
試験は2級が17歳以上となる人物、1級が指導監督的実務(いわゆる現場監督)経験年数1年以上を踏んでいる人物となります。
最終学歴や保有資格・実務経験年数も必要となるため、副業や独立を計画しているのであれば、まずはどこかで実務経験を積むと良いでしょう。
試験は一次試験と2次試験の二部構成で行われます。
どちらも一次試験はマークシート方式、2次試験は記述式となっており、直近の合格者数は約45%程度です。
第二種電気工事士よりもハードルがやや高いため、受験する場合は出願要項をよく確認してから出願するようにしてください。
冷媒フロン類取扱技術者
一般財団法人 日本冷媒・環境保全機構が主催している、冷媒フロン類取扱技術者の資格も持っておくといいでしょう。
クーラーを使用した際に発せられるガスを安全に取り扱うために必要とされる資格です。
先に紹介した2つの資格とは異なり、主催団体が実施している講習会を受講し、最後の修了考査に合格することで資格を取得できます。
第一種と第二種の2種類に分類されていますが、扱えるエアコンの大きさに変わりはありません。
ただし第一種の方ができる業務の領域が広いため、可能であれば第一種を取得することをおすすめします。
また、免許更新の際には更新講習会に出席しなければなりません。
最後に試験が行われるのも変わらないため、しっかりと講習を受けて免許更新ができるようにしましょう。
エアコン取り付け資格なしでできる業務
エアコン取り付けに必要と言われている資格がなくても、一部の業務は問題なく受けることができます。電気工事はフロンガス類を触ることがない環境での作業であれば、無資格でも一人で作業を終わらせられるでしょう。
エアコンの取り付けに必要と言われる資格がなくてもできる業務について、それぞれ解説します。
エアコン本体・室外機 設置業務
エアコン本体や室外機の設置については、特に必要な資格はありません。電気配線の工事や移設を伴わないのであれば、なんら問題なく作業が可能です。
ただし注意したいのは、エアコン本体と室外機の両方が非常に重たいことです。
ひとりでできるという力自慢もいるかもしれませんが、自信がない状態で一人でやるのは危険が伴うため辞めたほうがいいでしょう。
機器の破損につながる可能性があるほか、自身の怪我につながる可能性もあります。
エアコン配管、カバーの設置
エアコン配管の設置やカバーの取り付けも、特別な資格がなくても施工できるため素人でも問題なく作業できます。
すでに設置された後に新たなエアコンを取り付ける場合は、特別な工事も必要なく作業できる可能性もあります。
注意をしたいのは新規で取り付けをする場合です。
新規での設置の場合、エアコンの配管が通る穴が開いていないこともあります。
こうなると何かしらの手段で壁に穴を空けたり、配管を加工したりしなければならないため、資格よりも経験が必要になるかもしれません。
エアコン取り付けのリスク
エアコンの取り付けを行う際には、常に以下のリスクが付きまとっていると考えておきましょう。
- 家屋を破損させてしまう
- フロンガス漏れの危険性
- 電圧漏電の危険性
いずれも気をつけておかなければ、大きな事故や怪我につながりかねないリスクです。
それぞれの危険性を十分に理解し、安全第一で業務を行うようにしましょう。
家屋を破損させてしまう
ひとつ目は家屋を破損させてしまう点です。
これは、エアコンの取り付け工事中に、ぶつけて穴を空けてしまうだけではありません。
エアコン配管を室内に引くため、意図的に壁に穴を空けることも該当します。
家の柱や壁の中には、耐震構造上とても重要な施工が施されている場合があります。
穴を空ける場所を間違えてしまうと、エアコンの取り付け費用とは比べ物にならないほど高額の修繕費がかかってしまう可能性もあるのです。
事業としてやる以上、お客様の家を傷つけることはできません。
自信がない場合は無理をせず、別の人に任せたり、経験の長い人と一緒に行ったりしましょう。
フロンガス漏れの危険性
エアコン取り付け工事の中でも高度な技術が必要とされるのが「真空引き」です。
エアコン配管の中の空気を抜くことですが、これに失敗すると冷媒ガスが外に漏れてしまいます。
結果、エアコンから冷たい風が出てこず、クレームにつながる可能性があるのです。
真空引きを行うのに特別な資格は必要ありません。
しかし難易度も重要度の高いため、家屋の破損と同様に、自信がなければ誰か経験のある人に任せてしまうのも方法のひとつです。
電圧・漏電の危険性
エアコンとコンセントがそれぞれ適した電圧のものでなければ、どちらかが故障してしまうかもしれません。
また、電圧が合っていないエアコンとコンセントの組み合わせは、接続すると漏電を起こして火事に繋がる危険性もあります。
対処法としてはエアコンをコンセントに繋ぐ前に、双方の電圧を確認しておくことです。
電圧が合わない場合はコンセントを返還するなどの対処が必要ですが、資格を持っていないと工事できないため、業者に依頼するなどの対処をしましょう。
エアコン取り付け工事は資格より知識が重要
エアコンの取り付け工事に資格が必要なシーンは限られています。
しかし、いずれも重要なシーンで資格が求められることもあり、資格を取得しようと考える人も少なくないでしょう。
確かに資格も大事なものではありますが、エアコンの取り付け作業に関しては、資格以上に知識が重要です。
エアコンや電気の知識だけではなく、家屋の構造や電化製品の取り扱いなど、必要な知識は多岐に渡ります。
エアコン取り付け業務で独立しようと思っている人、副業で始めようと思っている人は、エアコン取り付けに関連する知識を身につけるようにしましょう。
同時進行で資格も取れるとベストですが、優先順位として知識の方が高いことを忘れてはいけません。
まとめ
エアコンの取り付けには、特別な資格は必要ありません。
しかし、取り付け業務を行ううえで、資格が必須な作業があることも事実です。
それ以上に重要になってくるのが、知識と経験です。
いきなり独立・開業もできますが、一度エアコン取り付け業者に転職したり弟子入りしたりして、自身の知識と経験を高めていきましょう。
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